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志望理由書は、 こうして変わる
Mepath塾長が、実際に慶應義塾大学 総合政策学部(SFC)に合格した志望理由書です。最初に書いた原稿から提出版まで、何を、なぜ変えたのかをすべて公開します。
高2年9月に最初に書いたもの/約700字
色のついた部分をタップすると、
そこをどう添削したかが開きます
私は児童養護施設の子どもたちのために何かしたいと思っています。
高校2年の夏、僕は児童養護施設出身の友人と出会いました。その人の話を聞いて、自分がどれだけ恵まれた環境で育ってきたのかを思い知らされました。自分は両親から愛されて育ち、何不自由なく暮らしてきました。でもその友人は全く違う環境で生きてきたのです。話を聞いたとき、本当に衝撃を受けました。
それから僕は児童養護施設に行ってみることにしました。実際に行ってみると、子どもたちはあまり心を開いてくれませんでした。仲良くなるのにとても時間がかかりました。もっと関わりたいと思い、いろいろな施設を訪問しました。神奈川県内の施設をたくさん回り、学生団体も立ち上げました。NPO法人にも所属しました。たくさんの子どもたちと関わってきました。
添削 01
「たくさん」を数字にする
提出版神奈川県内すべての児童養護施設に連絡をとり、12か所の訪問を行った。(中略)100名以上の施設の方、そして2歳から18歳の300人以上の子ども達と触れ合い、関わりを持ってきた。
本人は「たくさん」としか書けていませんでした。この数字は面談で掘り起こして初めて出てきたものです。自分では価値に気づいていない事実を引き出すこと。これが添削の一番の仕事です。
その中で感じたのは、子どもたちが人を信じることが難しいということです。親から愛情を受けられなかったことが影響しているのだと思います。とてもかわいそうだと思いました。こうした子どもたちが笑顔になれる社会を作りたいです。
添削 02
推測を、統計と先行研究に変える
提出版厚労省の調査によれば、全国の児童養護施設に暮らす子どものうち、虐待を受けた経験がある子どもは65.6%に上ると報告されている。
「〜だと思います」は主観です。外部の調査や専門家の言葉に接続すると、個人の感想が「取り組むべき社会課題」に変わります。調べる時間をここに使いました。
添削 03
「かわいそう」を消し、概念で言語化する
提出版そこで見えてきたのが、施設で暮らす子ども達の「基本的信頼感」の欠如だ。
評価されるのは同情ではなく分析です。感情は動機の説明にだけ使い、課題の記述には使わない。専門用語に置き換えた瞬間、作文が論文に変わります。
そのために、施設をもっと地域に開かれた場所にしたいと考えています。今、施設の方と一緒に新しい施設を作るプロジェクトを進めています。地域の人が来られる場所にすれば、子どもたちももっといろいろな人と関われるようになると思います。
SFCは幅広い分野を学べる大学だと聞いています。僕はSFCで、福祉やコミュニティについて学びたいです。そして卒業後は児童養護施設の子どもたちを支える仕事をしたいと考えています。SFCでたくさんのことを学び、成長したいです。よろしくお願いします。
添削 04
大学を固有名詞で名指しする
提出版精神分析学を専門としている森さち子教授の研究会に参加し、(中略)コミュニティの専門家である玉村雅敏教授のもとで卒業プロジェクトとして活動を行う予定である。
「幅広い」は誰にでも書けます。研究会・教授・科目を固有名詞で挙げ、4年間の計画として書けて初めて「この大学でなければならない理由」になります。
添削 05
「学びたい」を「問い」に変える
提出版「36の質問を行うと、関係性構築を実現でき、基本的信頼感の向上を図ることができるのではないか」という仮説をもとに、効果検証を行うことだ。
大学が見ているのは「何を学びたいか」ではなく「何を問うか」です。検証できる仮説を1つ立てられるかどうかで、最も差がつきます。
高3年9月に提出したもの/2000字
私は、児童養護施設で暮らす子ども達の笑顔が絶えない社会を実現したい。
高校2年の夏、児童養護施設出身の友人と出会い、その人生がどれほどの困難に満ちていたかを知った。両親から愛情を込めて育てられ平和と豊かさを享受してきた私にとって、生まれながらの環境がもたらす非情な現実は衝撃的であった。その友人は、他者との関係を築くことが難しく、学校から足が遠のいていた。私は、彼のことを理解したいと思い、実際に児童養護施設に足を運んだ。そこで子ども達と交流を持つと、彼らはまさに彼と同じように心を閉ざしており、他者との繋がりを作るのが難しい現状であった。
この現状を認識し、なぜ彼らがこのような状態になっているのかを探るために、私は神奈川県内すべての児童養護施設に連絡をとり、12か所の訪問を行った。さらに、学生団体の立ち上げやNPO法人に所属し、様々な施設と交流を図り関係を築き上げた。気がつけば、100名以上の施設の方、そして2歳から18歳の300人以上の子ども達と触れ合い、関わりを持ってきた。
そこで見えてきたのが、施設で暮らす子ども達の「基本的信頼感」の欠如だ。基本的信頼感とは、「世界や他者を信頼する感覚」のことで、幼少期の親子関係で築かれる。親から受ける無条件の愛情により、自分を肯定的に認識する力を得るのだ。しかし、厚労省の調査によれば、全国の児童養護施設に暮らす子どものうち、虐待を受けた経験がある子どもは65.6%に上ると報告されている。そのため、多くの子ども達は、親からの否定や暴力、不適切な養育の影響で基本的信頼感を大きく欠き、施設に入所するのだ。
青年期(11〜18歳)は、人の性格が形成される重要な時期である。多くの研究が示しているように、この時期までに基本的信頼感を獲得しないと、成人以降の精神的健康や人間関係に悪影響が及ぶ可能性がある。社会的養護に詳しい専門家や施設退所者は、この期間に「ありのままの自分を表現できる存在」に出会うことが基本的信頼感を築く鍵であると言う。私が出会った友人の経験もこれを裏付けている。「ありのままの自分を表現できる存在」との出会いを通じて、その友人は自分の価値を再確認し、前向きな生き方を選ぶようになった。
しかし、心理士の内海新祐氏はこのような存在との出会いには偶発的な要素が含まれており、意図的にそれを求めることは難しいと述べている。私はこの難しい課題に取り組むからこそ自身の存在意義があると思い、「偶然の出会いを必然のものへ」と転換させることに全力でチャレンジしたい。
そのために必要なのは「より多くの人と交流できる機会」と「関係性を築いていく具体的な方法」と考え、現在は「新児童養護施設」の建設プロジェクトを進めている。具体的には、児童養護施設の問題に先駆けて取り組む支援者の方、そして施設長の方と共に、その施設を「地域交流の拠点」とするというものだ。特定の時間帯に施設を開放し、施設の子どもと地域の子どもが共に遊ぶ地域交流の場としても機能する「空間」に変えることで、より多くの人と交流する機会を作ることができる。
しかし、ただ交流の機会を増やすだけでは「ありのままの自分を表現できる存在」ができるとは限らない。そこで関係性構築の方法を調べていたところ、アーサー・アーロン博士の「36の質問」に出会った。この質問は「初対面の相手でも恋に落ちるかどうか」が検証されているものだ。恋愛関係を中心に検証されているが、施設における関係性構築にも応用ができるのではないかと可能性を感じている。
そこでSFCで行いたいことは2つある。1つは、「36の質問を行うと、関係性構築を実現でき、基本的信頼感の向上を図ることができるのではないか」という仮説をもとに、効果検証を行うことだ。精神分析学を専門としている森さち子教授の研究会に参加し、子ども達の感情や状況を最大限配慮しながら研究を進めたい。
もう1つは、現在構想中の「新児童養護施設」で実際に活動を行い、「ありのままの自分を表現できる存在」と出会える施設を実現することだ。そのために「空間デザイン」「コミュニケーションデザイン」「ソーシャルマーケティング」や「SBCへの参加」等を通して人々の交流を促すための仕掛け作りについて学びたい。そしてコミュニティの専門家である玉村雅敏教授のもとで卒業プロジェクトとして活動を行う予定である。4年間の成果として施設での取り組みをまとめ、1つのロールモデルとして将来的にはそのモデルを普及させていきたい。
SFCは多岐にわたる分野を横断する力を持つ、まさに私が求める究極の環境だ。SFCと肩を組み、新時代の先陣を切る冒険を共に踏み出したい。
※本人の志望理由書です。第三者のプライバシーに関わる記述は一部を伏せています。
この1年で、実際にやったこと
同じ手順を、あなたの経験で行います。
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STEP 01
自己分析
自分の人生と、これまでの出会いを振り返る。何をしてきたかを全部書き出します。
12か所訪問・300人という数字が、ここで初めて言葉になった
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STEP 02
テーマを決める
振り返りの中から、自分が本当に探究したい問いを1つに絞ります。
「基本的信頼感は、どうすれば育つのか」
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STEP 03
リサーチ
統計、先行研究、専門家の言葉を実際に調べる。その問いを解ける大学・研究室もここで探します。
厚労省調査/内海新祐氏/「36の質問」/森・玉村 両研究会
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STEP 04
執筆
構成から組み直して書く。型の説明から始めるので、文章が苦手でも大丈夫です。
700字の作文を捨て、構成から書き直した
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STEP 05
添削の往復
書いては直す、を繰り返す。提出できる状態になるまで、回数の制限はありません。
15回の往復を経て、2000字の提出版へ
志望校から決めない。
問いから決める。
塾長は「SFCに行きたい」から始めていません。STEP02で問いを立て、STEP03で調べた結果、その問いを解けるのがSFCだった。この順番が、志望理由書の説得力を決めます。
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